■只見の湿原
只見町は日本海側の多雪地帯に位置し、標高1000m前後の山々が連なる山間地域にあるため、冷涼な気候帯に属します。只見町を含めた奥会津地域の、標高が1500mを超えるような山岳部には、多雪地帯を反映して雪田群落が形成され、その中には高層湿原が形成されています。こうした高層湿原は尾瀬地域を中心に会津駒ケ岳、中門岳など奥会津地域の山々の山頂部に広く見られ、只見町でも浅草岳や丸山岳山頂部に小規模な高層湿原が見られます。一方、町内には比較的低標高地にも湿原が分布しています。その代表的な湿原が、梁取の大曾根湿原(梁取湿原)と布沢大田の大谷地です。こうした湿原には、その特異な環境を反映した植物群落(湿原植生)が形成され、希少な動植物の生育・生息場所となっており、地域の生物相の多様性に大きく貢献しています。
2014年に只見地域がユネスコエコパークに登録されたことで、地域の財産として湿原の重要性が認識されるに至りました。これを契機として只見町ブナセンターでは、自然環境基礎調査として町内全域の湿原の植生調査を実施しました。また、只見町教育委員会では、大曾根湿原と大谷地においてボーリング調査により、花粉分析と植物遺体の調査を行い、湿原の形成と過去の周辺植生の復元に取り組みました。本企画展は、この二つの調査結果を中心に、只見町の湿原の実態を理解していただき、その保護・保全を図ることを目的としたものです。
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