自然首都・只見  


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■植物学者 河野昭一の世界

2016年10月14日、植物学者河野昭一氏が82歳で亡くなりました。河野氏は、著名な植物学者であり、教育者であり、また自然保護運動の活動家でもありました。植物の生きざま(生活史)を克明に観察記録し、その諸量を統計学的に解析し、集団としての種とその適応、進化を考察する手法は、戦後の日本の植物学や植物分類学、植物生態学に新たな地平を築きました。また、富山大学、京都大学では多くの研究者を育て上げました。こうした研究教育活動の傍ら、日本の自然環境や野生生物を保護・保全する活動に邁進するなど、その学問的・社会的貢献度は極めて高いと言えます。

 河野氏は只見町にも大きな足跡を残しています。河野は只見町史編さん事業の一環として行われた「ブナ天然林総合学術調査」を指導し、その成果のなかから只見町のブナ林に代表される自然環境の価値を科学的に裏付け、伐採中止に追い込むとともに、「奥会津森林生物多様性保護地域」の設定やその後の世界自然遺産の登録運動にも尽力されました。そして、只見町ブナセンターの設立や「ただみ・ブナと川のミュージアム」の開設を提案、その実現にも尽力されました。今日の只見町における、ブナを中核とした町づくりや只見町ブナセンターの成立に果たした役割は極めて大きいものがあります。

 本企画展は、植物学者河野氏の経歴を追い、その研究者、教育者そして自然保護運動の活動家としての業績を紹介し、また只見町における活動と業績を顕彰するものです。

河野昭一の世界.pdf パネル枚数:28枚 ※最初の5枚のみ閲覧できます。 


■只見の地形と地質

只見町は、福島県の西端、越後県境の越後山脈に接する山間地域で、周囲は標高1,000m前後の山地に囲まれています。山地は冬季の豪雪による雪崩で浸食されて雪食地形が発達し、それゆえ急峻複雑な山地構造の上にはブナ林をはじめとする様々な植生がモザイク状に成立しています。さらに、山の雪解け水や雨水は沢となり、それらは合流を繰り返し川となり、町内の谷や平野部を血管のように流れ下ります。そうした水辺域にもまた渓畔林や河畔林など特徴的な植生が形成されます。只見地域にはこれらのほかにも多様な自然環境や植生が存在し、それらを拠り所とした多様な野生動植物が生育・生息しています。

 さて、このように多様な只見町の自然環境はどのように形成されてきたでしょうか。この問いに答えるためには、只見町の過去から現在までに形成されてきた地質構造や地形に注目する必要があります。すなわち、過去に地球で起こった地殻変動により生じた岩石や地層と、火山活動などの地球の内部から働く力(内作用)と河川の浸食・運搬・堆積など外部から地表面に働く力(外作用)などで形成された地形です。

 本企画展では、主に只見町の地質と地形に注目し、解説するとともに、それらと関係する植生についても紹介します。只見の自然環境を理解するための一助となれば幸いです。

只見の地形と地質.pdf パネル枚数:33枚 ※最初の5枚のみ閲覧できます。 


■只見の山を眺めれば…そこにある樹木に気づく

只見町の大地は、日本列島形成初期のアジア大陸における大陸棚での造山活動とそれに続く日本列島が形成される過程での火山活動、そしてそれらの地質の浸食と堆積作用の結果として生まれました。なかでも、最終氷期以降の日本海側地域の多雪化は、只見町の地形に複雑さをもたらしました。雪崩は切り立った尾根を残して山肌を削り、山腹斜面に「雪食地形」を発達させ、融雪水は渓谷を深くえぐりました。移動する土砂は低地に堆積し、くぼ地には湿地が形成されました。こうして生まれた多様な地形の上には、それぞれに特徴的な植生が形成されています。

 本企画展では、このような只見町の特徴的な植生の代表的な樹種を紹介していきます。森林を構成する樹種の性質を知ることで、多様な樹種はそれぞれに育つ地形、つまり環境が異なることを理解することができます。それは逆に、それらの樹種が生育している場所の環境の特徴や、成り立ちを読み解くことにもつながります。この企画展で紹介した樹種を実際に野外で探してみてください。樹木を通して、只見町の自然環境の新しい一面を発見することができるでしょう。多くの方々に只見町の広大な自然に育つ多様な樹木とその性質、それらの樹木を育む只見町の地形、自然環境の特徴について理解を深めていただくことができれば幸いです。

只見の樹木.pdf パネル枚数:31枚 ※最初の5枚のみ閲覧できます。 

 
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